理系凡人のつぶやき

科学に関することだけでなく興味があることについていろいろと書いていくつもりです。

インパクトファクター(IF)ってなに?

 自分が大学に在籍していた時にはよく指導教員から「出した論文で教員の評価が決まる」なんて言われたものですが、いったいどんな論文を出せば高い評価が得られるのでしょうか? 

パブリッシュ・オア・ペリッシュ―科学者の発表倫理

パブリッシュ・オア・ペリッシュ―科学者の発表倫理

 

  おおよそこのような人が言うところの「評価を得られる論文」とはインパクトファクター(IF)という数値が高い雑誌に掲載された論文のことを指していると思われます。IFの高い雑誌としては最も権威のある科学雑誌といわれるNature(ネイチャー、英)やScience(サイエンス、米)などが有名でしょうか。2013年のIFはNatureで42.351、Scienceで31.477となっています。これだけだとピンと来ないかもしれませんが日本化学会のBulletin of the Chemistry Society of Japan(ブルケム)のIFが2.222であることを考えるとScienceとNatureの値は驚異的だといえます。ではインパクトファクター(IF)が高い雑誌に掲載された論文は良い論文とみなしていいのでしょうか?この点をもう少し詳しく書いていきたいと思います。

 まず、インパクトファクター(IF) の算出方法を示してみたいと思います。意外に算出方法を知らない人も多いのではないでしょうか、かくいう自分も大学に在籍していた時は知りませんでした。X年におけるある雑誌のIFは次のようにして求められます。

IF(X年) = 被引用回数(X-1年とX-2年の論文へのX年の引用) / 出版論文数(X-1年とX-2年)

この数式からわかるようにIFはあくまでも雑誌の評価指標として開発されたものであり、個々の論文や研究者の個人評価指標としての利用はそもそも想定されていません。IFの発案者であるガーフィールド博士も誤った利用への警告を発しているようです。

 IFの高いScienceやNatureは撤回論文の数が特に多く、このような雑誌への論文投稿を急ぐあまりに不正が行われている可能性があります。しかし、IFの高い雑誌に掲載されただけでは不十分で、その後いかに多く他の論文に引用されたかどうかがより正確にその論文の重要性を反映していると考えるべきです。このあたりのことも大学や大学院の講義で学生に教え、IFに振り回されないような研究者を育成していくべきだと思います。