理系凡人のつぶやき

科学に関することだけでなく興味があることについていろいろと書いていくつもりです。

オーサーシップと研究不正 

 

  前の記事では研究不正(ミスコンダクト)の定義について書きました。現状ではオーサーシップに関わる不適切な行為(ギフトオーサーシップなど)の扱いは機関によって異なる、つまり明確な研究不正というよりはグレーゾーンな問題であると捉えられているようです。しかし、不適切なオーサーシップはグレーではなく、れっきとした研究不正であると私は思っています。

科学者の発表倫理: 不正のない論文発表を考える

科学者の発表倫理: 不正のない論文発表を考える

 

 論文の「筆者」(=オーサーシップを持つ資格がある人)とは『発表された研究の内容に責任を持ち、研究において十分な貢献を果たした人々』 のことで、『助言や技術的な協力をしただけの人』や『データの収集だけを行った人』、『研究チームの責任者というだけで実質的な貢献のない人』は「筆者」ではないとされています[1]。 

 この定義にそぐわない不適切なオーサーシップの代表例としてはギフトオーサーシップとゴーストオーサーシップが挙げられます。ギフトオーサーシップとは本来筆者の資格がないにもかかわらず「贈り物」のように筆者に加える行為でゴーストオーサーシップは筆者に加えるべき人物をあえて加えない行為のことです。

 なぜ、私がこのような不適切なオーサーシップを研究不正と考えているのかというとオーサーシップ自体がその論文の科学的な事実の一端を担っているためです。つまり、オーサーシップには「誰が」、「どのような」研究を行ったかという科学的な事実が反映されなければならないからで、不適切なオーサーシップはある意味実験データの改ざんに近いものだと思っています。研究不正というと実験データの改ざん・捏造等の問題がクローズアップされがちですがオーサーシップの問題も重要視されるべきです。

 

[1] 科学者の不正行為 -捏造・偽造・盗用ー 山崎茂明著 丸善株式会社 2002