理系凡人のつぶやき

科学に関することだけでなく興味があることについていろいろと書いていくつもりです。

研究不正とアカハラ

前の記事で研究室選びの重要性を説明しましたが、それに関連する話をひとつ。


研究室配属で注意すること ~心身ともに健康な研究生活を送るには~ - 理系凡人のつぶやき

 最近の研究不正といえばSTAP細胞の話が有名ですが、規模という点では東京大学分子細胞生物学研究所で起きた研究不正の方がより大きな事件といえます。少し前にこの問題の最終報告書を読んでみたところ、あらためて「どのような研究室に所属するかによってその後の研究生活が大きく左右される」ということを痛感したので少し述べてみたいと思います。

 この研究不正では合計33報もの論文に不正行為があると認定され、研究室の主宰者であった加藤茂明氏をはじめ当時の助教授、准教授、特任講師など計11人が不正にかかわったとされています。そして、教員たちによる不適切な研究室運営や指導等がこの問題の主たる要因となったと報告書では結論付けられています。では実際にはどのような研究室運営や指導等が行われていたのかを報告書から引用すると 

 

加藤氏の主導の下、国際的に著名な学術雑誌への論文掲載を過度に重視し、そのためのストーリーに合った 実験結果を求める姿勢に甚だしい行き過ぎが生じた

杜撰なデータ確認、実験データの取扱い等に関する不適切な指導、画像の「仮置き」をはじめとする特異な作業慣行、実施困難なスケジュールの設定、学生等への強圧的な指示・指導が 長期にわたって常態化していた

一度でもブラックな研究室に所属したことがあれば思い当たる節があるような話ではないでしょうか。実施困難なスケジュールの設定強圧的な指示・指導なんていうところは特に。自分の経験からするとむしろこれくらいは当然とか思っている教員もたくさんいそうな気がします。 

 

不正行為に関わった者の多くは、大学院学生の頃から加藤氏が指導してきた者たちで、加藤氏に従順であり、過大な要求や期待に対し、それを拒否するどころか、無理をしても応えるしかないといった意識を持つような環境が存在していたといえる

 もう、なんというか・・読んでいていたたまれない気がしてきますね。ブラックな環境に適応したがために不正を起こすようになってしまったともいえるかもしれません。もしこのような研究室に所属することさえなければもっとまっとうな研究生活を送れた可能性があったのではないかと言いたくなります。

 

 STAP事件をきっかけに研究不正に関する世間の目は厳しくなっているように感じますが、このような若手や学生が置かれている研究環境に関しての話題はあまり聞かれない気がします。学生としてはとにかくブラックな研究室を避けるくらいしか対策がありません。しつこいようですが、研究室を選ぶ際は慎重になるべきです。