理系凡人のつぶやき

科学に関することだけでなく興味があることについていろいろと書いていくつもりです。

STAP事件の知られざる被害者

 STAP事件では再生医療に期待する患者さんが失望させられたり、前の記事で紹介したように多額の経費(税金)が疑惑の検証に使われたりと様々な被害が出ました。しかし、表には出てこない「被害者」もたくさんいたはずで、その一つが研究活動おいて実質的に実験を担っている若手の研究者(ポスドク、学生)だと思っています。

 STAP論文は生物学に関して教養程度の知識しかない自分でも衝撃的でした。まさか、そんなに簡単に多能性をもつ細胞が作れるなんて…ある意味iPS細胞を超える発見じゃないだろうかと思っていました。自分のような分野外の人間でさえ衝撃的であったのですから、実際に再生医療など幹細胞を扱う研究者の衝撃は相当のものだったと容易に想像できます。この分野は競争が特に激しいですから全世界で猛烈な追試が行われたことは間違いないでしょう(そのおかげで早期に不正が発覚したと言えるかもしれません)。しかし、後に明らかになった通りSTAP細胞はデタラメだったわけで、デタラメのために無駄な追試が行われてしまったわけです。この追試を実質的に担っていたのは上述したように「若手の研究者」だと思われます。彼らは成果を出して職を得なければならず、無駄なことに時間を費やす余裕などありません。金銭的な面だけを考えても彼らに相当な被害が出ていると言えます。さらに「うまくいくはずのない追試」をやらされて精神的にも相当つらかったでしょう。こういうところに思いを巡らすとSTAP事件は相当に深刻で、論文の筆者たちの責任は極めて大きいと思います。不幸中の幸いだったのは1ヶ月程度で疑義が生じ、STAP細胞に対する不信感が早期に極めて大きくなったことかもしれません。